錦紗
きんしゃ

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錦紗

錦紗とは錦紗縮緬(ちりめん)もしくは錦紗御召(お召し)の通称ですが今現在は主に錦紗縮緬( ちりめん)のことを指す絹織物のひとつです。

 

錦紗縮緬(ちりめん)は経糸・緯糸を共に細い生糸を用いますが、経糸を密にして緯糸に右撚り・左撚りの強撚糸を一段ごとに交互に平織で織り込んで いきます。通常の縮緬(ちりめん)に比べ糸が細く織も密のためシボが細かく、平滑にして軽く光沢が あるのが特徴です。

 

大正期から戦前にかけて流行し着尺、羽尺、裏地などとして用いられました。また薄手のものは八掛にも用いられ裾や袖口の色彩のアクセントという役割も担っていました。大正期は「大正ロマン」と呼ばれることからもわかるように、ヨーロッパで一世を風靡したアールデコ、アールヌーボー様式が和服の柄にも用いられ百合やバラ、カトレアなど洋花が描かれるようになり、いわば当時の自由な個性と感情を謳歌した時代と言えます。

古布としては市松人形の衣裳や古布細工物の素材生地として錦紗縮緬(ちりめん)の発色のよさ、デザイン 性がいかんなく発揮され人気のある古布のひとつです。

 

大正ロマンの着物の形は同じなれど、そこに込められた意匠は自由・個性・遊び心と言え、当時の画家でもあり現在のイラストレーター・グラフィックデザインの先駆者的存在でもある竹久夢二の目に留まり数多くの 作品で当時の服飾デザインの豊かさを目にすることができます。

 

大正ロマンで欠かせない布地がもうひとつ、銘仙です。

銘仙とは平織の絹織物のひとつで、江戸後期には目千・目専・繭繊などと当て字され、今の銘仙になったのは明治以降とされております。緯糸に玉糸と呼ばれる太目で節のある絹糸が使われているのが多いのも特徴のひとつで主に普段着や夜具地に用いられました。ほぐし織りという仮織りしてから先染めしたのち一旦ほぐし、再び本織の緯糸を織るという手法が確立すると銘仙の持つ絣に大胆な柄構成を加飾するこたが可能になりアールヌーボー様式の美しい曲線美を表現したデザインなどが生み出されました。

 

錦紗縮緬(ちりめん)と銘仙ですが、銘仙は普段着ですので格としては圧倒的に錦紗縮緬(ちりめん)の方が上なことは言うまでもありませんがこの時代は晴れの日のためであれ普段着であれ、裕福な人々から 一般の人々まで様々なお洒落を謳歌した時代だったことも古布が伝える役割のひとつと言えます。

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