江戸期刺繍
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皆様のご自宅にどれくらいの人形がありますでしょうか。
例えば雛人形や五月人形などの節句人形や古くから実家にある藤娘を模った日本人形、三春人形のような郷土人形、また棚やキャビネットの上にはフィギュリンと呼ばれる陶磁器製の人形、ペコちゃんに代表されるノベルティ人形、女の子用のリカちゃん人形やバービー…などなど人形と一言で申し上げましてもその種類の多さに驚かされます。
しかしながら、「子供が大きくなった」「引っ越しする予定」「実家・家屋の解体」などの理由から飾らなくなってしまった人形や収納スペースを占領してしまっている人形なども多いのではないでしょうか。
人形とは宗教的意味合いを持ち、先史時代より世界中で作られ信仰の対象や儀式などでも用いられた、人や動物を模った道具です。エジプトやギリシアでは木製・粘土・骨・象牙・青銅製の人形が作られ、日本においては縄文時代の土偶や古墳時代の埴輪・形代などが例として挙げられます。
中世以降になりますと子供の健康成就や様々な祈願成就のために作られた人形が転じて子供の愛玩道具、観賞用として作られるようになります。
いずれにしましても、人形は人間の生活する地域において必ずと言っていいほど存在し、ほぼすべての民族が自分たち人間の姿・形を模倣した人形を作っているという事実は人形が私たち人間にとって最もプリミティブな文化活動といっても過言ではないでしょう。
そこで先述しました、飾らなくなった人形や部屋のスペースを占領し続ける人形に話を戻しますと、そもそも「不要になってしまった人形をなかなか処分できない」という現状が存在するのではないでしょうか。もっと端的に申し上げますと「人形は捨てにくい」という心理的要因が大きいのではないでしょうか。
人形は想いが宿るとされ、引っ越しや家屋の解体などの前に人形供養という形で処分される方も多いのではないでしょうか。
これは偏に人間と人形との繋がりが他の骨董品や美術工芸品に比べ、最も原始的・根源的な繋がりであることが起因していると私は考えます。人形は自分達の分身であるところから始まっているため、人形処分という際にはどこか後ろめたさを感じてしまうのではないでしょうか。
そこでご提案したいのが人形の処分ではなく、嫁ぐ・嫁がせるはいかがでしょうか。
人形には保存方法などに長けた人形コレクターの方がいらっしゃいます。
昨今の生前整理や終活・断捨離ブームにより、蒐集された人形を手放されるコレクターの方も少なくないのですが、そのことが人形を次の代のコレクターの方にお譲りする、人形を嫁がせることに繋がり、今人形は高額査定・高額買取りの可能性が十二分にあるのです。
人形供養は有料な上、さらにお炊き上げされてしまう可能性もあります。それこそ人形の最期です。その前にまだ必要とされてる人形コレクター方とのご縁を人形の買取りという形で探してみるのはいかがでしょうか。
先日、京都の高島屋で100体限定販売された「ロリーナ」という名前の中原淳一モデルのスーパードルフィーの人形が買い占められたというニュースをご存知の方も少なくないのでしょうか。スーパードルフィーは京都の模型会社ボークスにより製作・販売されている球体関節人形です。投機目的で買占めが行われたのではないかと批判され大きな話題となりました。
球体関節人形で作られる人形作家による創作人形は若い女性を中心に大変人気があり、国内外問わず新たな人形コレクター層の開拓に成功しました。球体関節人形の技術のベースとなっているのが日本の市松人形の技法や西洋アンティークドール、ビスクドールの技法であり、そこから市松人形やアンティークドール・ビスクドールなどの時代のある人形を蒐集され始める方もいらっしゃいます。
さらに人形には従来のような愛玩用としての人形の価値に加え、美術骨董品・美術工芸品としての価値が加味された鑑賞用の人形も存在します。生前整理や終活などで人形を手放されるコレクターの価値のある人形に対し、アンティークコレクター、骨董蒐集家からの需要が高まっている面もございます。
故に、もし人形のご売却をご検討でしたら、新しい人形ブームがあり、且つ次の世代の人形コレクターへの「人形の嫁入り」が行われている今の時流、人形高額買取りの可能性がある今の時流に乗ることが肝要と言えます。
では次に「どのような人形が売れるのか」いくつか例をご紹介したいと思います。
人形には用途や文化、風俗に合わせた様々な種類があり、それぞれ意匠が異なります。人の生活と密接な関係のある人形だからこそ、そこまで多くの種類に発展したのだと考えられます。
遊び道具として用いることは人形の主な用途といえるかもしれません。
日本各地を見ましても郷土人形と呼ばれる土人形や張子人形が多く作られ愛されてきました。宮城県の堤人形と京都の伏見人形はかつて東の堤、西の伏見と呼ばれるほど知られた土人形、郷土人形の代表と言えるでしょう。
また張子人形としては福島県の三春人形、東京の犬張子が有名です。また東北地方の温泉地を中心に作られた伝統こけしも郷土人形の範疇に入ります。
こうした郷土人形は民芸品・工芸品として普及しました。
また遊ぶ人形には「着せ替え」の要素も必要不可欠でしょう。江戸時代より大名家や旧家など富裕の間では市松人形が着せ替え人形として流行します。着せ替えるためには着物が必要です。市松人形は女子の裁縫の練習台という役割も担っており、着られなくなった着物やハギレで人形衣裳を作るというのが慣わしでした。そういった用途もあり市松人形は裸で売っていることが多く、当時の女の子が思い思いの着物を着せ楽しんだようです。
大正・昭和初期になりますと文化人形と呼ばれる布製の人形やセルロイド人形が売られるようになり、中でもキューピー人形やデコちゃんなどに人気がありました。着せ替え人形の文化は戦後にあると日本全国に広まります。
リカちゃん人形やバービー人形は、戦後復興におけるファッションの盛隆をいち早く取り入れた服のデザインで日本中の女の子が遊ぶ着せ替え人形として定着しました。
スーパードルフィーなどの球体関節人形は服のみにとどまらず、瞳の色や髪の毛、体型など持ち主様個々人の意向を反映させることができるため、今最も注目されている人形の分野ではないでしょうか。
鑑賞人形に求められるのは時代性と作家性です。
フランス語のビスキュイを語源とする西洋アンティークドール・ビスクドールは鑑賞人形として今なお高い人気を博しております。フランスのジュモー、ブリュ、ゴーチェ、シュタイナーやドイツのアーモンドマルセル、シモン&ハンビック、ケストナー、そして日本のノリタケが製作していたモリムラドールが代表として挙げられます。
また日本ではサクラビスクと呼ばれる人形が大正から昭和初期にかけ作られるようになります。西洋ビスクドールと異なり和風のお顔立ちにフリルのついたドレスなど洋装をしており、サクラビスクだけをお集めになられているコレクターの方もいらっしゃいます。
日本の市松人形や雛人形、五月人形なども鑑賞人形に入ります。
明治時代になると市松人形は東京の永徳斎、京都の丸平と言われるほど卓越した人形師の手によって作られ日本を代表する美術工芸品として万博展覧会などに出品されるほどでした。
永徳斎や丸平の他にも光龍斎や平田郷陽など名だたる人形師が市松人形など日本人形を子供の玩具から芸術品の域にまで高めました。中でも平田郷陽は市松人形にとどまらず、木目込人形の技術を発展させ、リアリティーを追求した衣裳人形、生き人形(活き人形)を完成させ人形師として初の人間国宝に認定されます。
まるで人間がその場にいるような、まさに生きているかのような造形美はその後の創作人形・球体関節人形にも大きな影響を与えました。
雛人形や五月人形において最も有名な人形司は京都の大木平蔵(丸平)でしょう。
先述しました市松人形はもちろん、大木平蔵(丸平)は雛人形の作製で日本最高峰の人形司と言っても過言ではないでしょう。有職故実に忠実なその意匠は江戸時代の大名家や明治時代の財閥のご息女の間で愛された垂涎の的でした。
雛人形は時代によって元禄雛、享保雛、次郎左衛門雛、有職雛、古今雛と様々な種類があり、骨董的価値からも人気があります。いわゆる衣裳着雛人形が豪華絢爛さや精巧さを競う中、木目込人形で作られた木目込み雛も江戸時代より作られておりました。その素朴な表情と味わいで人気があり、かつ人形師の個性が活かせる自由度が高く、今現在も多くの人形作家が活躍する分野です。
金林真多呂が作る木目込み人形・真多呂人形は伝統と現代のデザインを融合させた木目込み雛を製作し人気を博しております。
そして現代の雛人形において後藤人形の後藤由香子の存在は外すことができない人形作家と言えるでしょう。伝統にとらわれない新しい雛人形は群を抜いており、この後の人形界をけん引する人形作家でしたので、彼女の早すぎる死が本当に悔やまれてなりません。
ソフビ人形、企画もの、企業もの、ノベルティ人形がこれに当たります。
代表的な人形が不二家のペコちゃんでしょう。店頭販促用に作られたペコちゃん人形は時代により素材がセルロイドであったり台座がブリキであったり顔の表情にも違いがあります。
松下電器(現在のPanasonic)のナショナル坊や、佐藤製薬のサトちゃん人形、コルゲンコーワのケロちゃん人形など店頭ディスプレイ用に作られた人形は、昭和レトロと呼ばれるジャンルに属する骨董品として認知されており高い人気があります。
また仮面ライダーやウルトラマン、ゴジラ、大魔神などのソフトビニール製人形、ソフビ人形も昭和レトロとして現在でも高額での買取りの可能性があります。
陶磁器人形は文字通り陶磁器で作られた人形のことを指します。フィギュリンと呼ばれ世界中に愛好家がいるジャンルです。ドイツのマイセンやドレスデン、スペインのリヤドロ、日本ではセトノベルティが知られております。
マイセンはヨハン・ヨアヒム・ケンドラーという天才造形師により磁器人形・フィギュリンが作られるようになります。動物をモチーフにした人形に始まりロココ様式の人形を数多く残しております。ギリシア・ローマ神話をモチーフに躍動感と気品あふれる造形美は見る者の心を虜にしました。
陶磁器人形・フィギュリンは人形蒐集家からはもちろん西洋アンティーク・陶磁器のコレクターからもニーズがあり高額査定がされる可能性を秘めている人形と言えます。
価値のある人形のわかりやすい見分け方
人形の種類がわかったら今度は簡単な見分け方です。
これは衣裳人形に言えることですが、時代のある・なしに関わらず、価値のある人形が着ている衣装・着物の素材は布自体にも価値がある場合が多いです。
雛人形は時代のあるものですと江戸時代に作られております。着ている着物も当然江戸時代に作られたものになります。当時の絹の質は現代のそれとは異なり細くキメが細かいのが特徴です。その絹布に施された刺繍も実に見事です。これらは現代においては、布の骨董品・古布と呼ばれているものが使用されており、古布が使用されている人形は時代もあり価値のある人形、つまり買取り価格の高い人形である可能性が高いです。
市松人形は最も古布が端的に現れる人形です。先述しましたように市松人形は着せ替え人形として裁縫を学ぶ素材としての役割もありました。江戸・明治・大正に着られていた着物が着れなくなり細工物として再利用されました。柄のいいところ、可愛らしいところを人形に合うように加工します。市松人形で江戸縮緬(江戸ちりめん)や錦紗などの古布を素材に衣裳が作られたものは大事にされており保存状態・コンディションもよいことが多いです。
また西洋ビスクドールも時代のあるフランス製アンティークレースなどが用いられ、可愛がられているケースが見受けられます。ドール衣裳で当時オリジナル、アンティークレースやシルクの古布を用いたフランス貴族のようなアンティークドレスはそれ自体で数万円する衣裳もあり、骨董的価値の高さがわかります。
現在の創作人形においても古布が人形衣裳の素材として用いられ、現在のデザインと古布の融合は新しい人形の可能性を感じさせます。
古布は触った感覚や透け感などが同じ絹や木綿でも今のものとは全く異なりますので、もし古い人形、時代を感じさせる人形をお持ちでしたら衣装に是非とも触れて違いを実感していただければと思います。
人形買取りのポイントは時代性・作家性・古布にあります。
・時代性は玩具用人形、観賞人形問わず骨董的価値があるかどうか、希少性の有無で判断されます。
・作家性は名工・名人形師の作品、さらに工房やメーカーに対する評価で判断されます。
・古布は人形は勿論、着ている衣装・着物の時代性の有無・出来栄えで判断されます。
人形は日頃から可愛がっているオーナーの方が、他の骨董・美術品コレクターに比べ、多いジャンルとして知られております。オーナーご本人様としましては人形を手放す際はまさに我が子を嫁に出す感覚に似ているかと思われます。
大切な人形だからこそ、人形をお売りの際はきちんとした知識で鑑定できる買取り業者にご依頼することを強くお勧め致します。
またご遺品として人形の処分をご検討しているご遺族様にとりましても、その人形の価値を判断し説明ができる買取り業者にご依頼した方が安心感があるかと思われます。やはりそこでも人形買取り業者の取捨選択が必要不可欠になってまいります。
弊社・呂芸は1985年より杉並区で古布・骨董・民芸と扱って参りました。人形だけでなく人形衣裳や古布に対する知識は他の買取り業者と比べましても豊富ですのでお客様にとってお間違いのない鑑定と査定ができる自負がございます。
人形専門の鑑定員もおりますのでご安心してお任せ下さい。もし人形のご売却をお考えでしたらお気軽に私たち呂芸にご相談下さいませ。
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この記事を書いた人
東京美術倶楽部 桃李会
集芳会 桃椀会 所属
丹下 健(Tange Ken)
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