江戸期刺繍
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能面師とは、能の舞台で用いられる面(おもて)を制作する人のことで、「面打師」とも呼ばれます。能面は木を彫って彩色した顔ですが、人物の姿を写しただけの彫刻ではありません。演者が面を着け、わずかに顔を上げ下げすると、穏やかに見えた表情が悲しげに変わり、静かな顔に強い意志が宿ったように見えることがあります。能面師は、舞台の光や演者の動きによって生まれる表情まで考えながら、一面一面を作り上げます。
能面には、若い女性を表す小面や若女、年老いた男性を表す尉面、鬼神や怨霊の姿を示す面など、さまざまな種類があります。同じ種類でも、目の開き方、頬の丸み、口元のわずかな違いによって、見る人が受け取る印象は変わります。美しい顔を彫るだけでなく、役柄にふさわしい気配を生み、演者が舞台で使える形に仕上げることが、能面師の大切な仕事です。
能面制作の歴史をたどると、龍右衛門や赤鶴といった古い面打師の名が伝わっています。安土桃山時代から江戸時代にかけては、大名たちの能楽愛好を背景に能面の需要が高まり、出目家など制作を代々継承する家も活躍しました。ただし、古い面に伝わる作者名が必ずしも確定した事実とは限りません。名品を手本にした「写し」も数多く作られており、作者や年代を考える際には、造形や彩色、面裏の彫り、焼印、箱書、伝来を総合して見る必要があります。
能面師の技は、正面から見える表情だけに表れるものではありません。木の厚みや裏側の削り方、目や口の奥行き、胡粉による下地と繊細な彩色にも、制作の工夫が込められています。古い能面を鑑賞するときも、現代の能面師が手がけた作品を見るときも、「誰が作ったか」とともに、「舞台でどのように見えるか」を考えると、その魅力はいっそう深まります。
本記事では、能面師の歴史や代表的な家系、能面が完成するまでの工程、古面と写しの関係を解説します。さらに、作品を鑑賞・査定する際に注目したい点にも触れながら、能楽を支えてきた面打師の仕事を紹介します。

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この記事を書いた人
東京美術倶楽部 桃李会
集芳会 桃椀会 所属
丹下 健(Tange Ken)

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