能装束とは
能装束とは能で用いられる衣装のことを指します。能の起源は社寺の境内や拝殿などで行われる、神仏に奉納するための信仰行事です。観阿弥・世阿弥により鑑賞できる舞台芸能として能が大成されたことに伴い能装束も安土・桃山時代になり豪華絢爛な美術工芸品として武家や貴族階級などに重宝されるようになりました。
家業として能に携わっている方でしたらともかく、一般のお客様の中にも家で引き継がれてこられた能装束や解かれて能装束としての形ではなく唐織などの古布としてお持ちの方もおり、そういった方から「この能装束の価値はどのくらいあるのか?」と問い合わせを受けることも少なくありません。
そこで今回は能装束の買取ポイントとしてその種類と価値についてご案内したいと思います。
ご自宅にある能装束・能衣装を売りたい、処分されたい、とりあえず価値だけでも知りたいという方のお役に立てれば幸いです。
能装束には様々な種類があり着用する箇所により呼称も異なります。
①表着(うわぎ)=装束を着用する際に一番上に着る衣装
小袖と広袖のものがあり、唐織(からおり)・厚板(あついた)・長絹(ちょうけん)・単法被(ひとえはっぴ)・舞衣(まいぎぬ)・水衣(みずごろも)・直垂(ひたたれ)・素襖(すおう)・袷法被(あわせはっぴ)・側次(そばつぎ)・狩衣(かりぎぬ)・直衣(のうし)がそれに当たります。
・唐織
主に女性用の表着として用いられる、能装束を代表する絢爛豪華な織物です。
室町時代に中国・明より渡来した錦の織物を唐織と呼び、能ではその呼び名がそのまま装束の呼称とされております。
金糸や銀糸、彩色豊かな糸を用い浮織の技法で草花などの文様を刺繍の様に見せます。
紅入り、無紅とあり紅入りは若い女性、無紅は中年以降の女性をそれぞれ演じる際に用いられます。
・厚板
男役用の着付で老若貴賤から荒神鬼畜までと幅広い役で用いられます。唐織と同様に中国伝来の厚板織という織物がそのまま装束の名称となったものになります。超人的な役が多いため雲や雷、龍など霊的な文様が施されております。
能装束における唐織と厚板の差はまさにこの文様になります。
・長絹
役によっては男役にも用いられますが、主に舞を舞う女役で着用されます。広袖、脇あきの装束となり透き通った絽や紗に金銀色糸で様々な文様が織り出され、舞の演出に優美さを加えます。
・法被
武人や鬼畜の役に用いられる表着です。鎧や超現実的な衣装を表現するのに用います。狩衣もですが袷と単とがありそれぞれで役柄の剛・柔を表しております。
・舞衣
文字通り舞を舞う女役のみに用いられます。長絹に似ておりますが脇は縫い合わされており意匠も総模様と長絹とは異なります。
・水衣
老人や僧侶といった男役のほか男・女役の日常着を表現するのに用いられます。薄い絹で作られており広袖、色味も抑えられた表着になります。
・直垂
直垂は武士の礼服として用いられます。袴には白紐が付けられるのが直垂の特徴のひとつです。
・狩衣
丸襟・広袖の男役用の表着になります。神性を具した翁や貴人などに用いられます。法被と同様に単と袷があり、単は優雅な役に、袷は力強い役柄にそれぞれ用いられます。
②着付(きつけ)=表着の下に着る能装束
表着にもあった唐織・厚板のほか縫箔(ぬいはく)・摺箔(すりはく)・熨斗目(のしめ)・白綾(しろあや)・白練(しろねり)が挙げられます。
・縫箔
女役の着付となります。肩脱ぎにし腰巻として着用します。様々な色の刺繍や金・銀の摺箔によって文様を表現します。唐織と同じように紅入りや無紅があります。
・摺箔
女役の着付です。文様は型置きした糊に金箔や銀箔を押して貼付け表現します。特に三角形を連続させた文様は鱗箔と呼ばれており女の持つ執念や激しい情念を表すことに用いられます。鬼女や蛇体がそれに当たります。
③袴類
袴にも大口(おおくち)・半切(はんぎり)・長袴(ながはかま)(素襖下)・緋長袴(ひのながはかま)・指貫(さしぬき)・直垂(ひたたれ)の袴・稚児袴(ちごばかま)といくつかの種類がございます。
④その他小物
腰帯(こしおび)・鬘帯(かづらおび)・角帽子(すんぼうし)・頼政頭巾(よりまさずきん)などが相当します。
先ずは何といっても唐織と厚板になるでしょう。金・銀糸や様々な糸を用い織られる唐織と厚板には能ならではの多彩な表現が見られ幽玄の美を演出します。
段文様、段替文様と呼ばれる文様配置の妙は圧巻です。
段文様とは腰を境にして上下に対比させる二段文様と肩・腰・裾の三段文様が存在します。元禄期(1688~1703)頃流行った文様構成ではありますが桃山時代の唐織にも見られます。
桃山時代の唐織と江戸時代の唐織では袖幅が異なり、江戸の方が広く作られ且つ地文様と上文様の分化がされるという特徴があります。
能装束は装束の形ではなく、解かれて布地になったものも高額での買取となる可能性が大いにございます。
というのも、能装束で用いられる唐織や金襴、錦などといった織物は茶道具などを包む仕覆や掛軸の表装、着物の帯地としても用いられることが少なくないからです。
名物裂と呼ばれる染織品には室町時代を中心に中国の明などから伝えられた唐織、金襴、緞子、間道、錦などがあり名物茶器の仕覆や掛軸の表装裂として大変珍重されたものでした。
時代のある裂でこの様に茶道などに関わりのあるものは単なる古布ではなく美術品としての価格となるため買取価格が高額になることも少なくありません。
ただ能装束の文様の様式や三百数種にも及ぶ名物裂の見極めや鑑定は一般のお客様はもちろん古布に馴染みのない骨董店や大手着物リサイクショップでも難しいかもしれません。
古い織物や能装束といった日本の伝統芸能に通ずる古布は古布専門の買取店に依頼することを強くお薦め致します。
その中で何店か見積もりを取られてもいいかもしれません。
【まとめ】能装束の正しい処分・売却方法とは
能装束には表着・着付・袴・その他小物と大別され、着用する箇所によって呼称が異なります。
中でも表着の唐織と厚板は能装束を代表するもので、その絢爛豪華さは他の伝統芸能の衣装には見られない様式と言えます。
能装束は着物としての形だけでなく布地や裂としても価値が高く、唐織や金襴、錦などといった織物は茶道具などを包む仕覆や掛軸の表装裂、着物の帯地としても数寄者に珍重されております。
時代のある能装束や裂は単なる古布ではなく茶道や日本伝統に通ずる美術品になります、こういった古布の鑑定や査定は一般の骨董店や大手リサイクルショップや大手着物リサイクル業者ではなかなか判別がつかず、低い金額での買取となる可能性がありますので古布を専門とした買取店に依頼することが肝要かと存じます。
私たち呂芸は長らく古布を中心に取り扱ってまいりました。
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