高級着物をお売りの際に重要なのことは「作家性(織元・染元)」「産地染織」「証紙」「コンディション」です。
作家ものにも作家本人の作品であるものと工房で制作されたものがあり、この二つでは大きく評価がわかれます。また手織か織機でも評価が変わります。
西陣織の龍村美術織物と聞いて頭に浮かぶのが「龍村平蔵製」と「たつむら製」です。「龍村平蔵製」は龍村錦帯ともいい、初代龍村平蔵から当代4代目にわたり高島屋と制作してきた高島屋オリジナルの帯です。一方「たつむら製」は龍村美術織物の独自ブランドになります。漢字で「龍村製」と書かれた帯もございます。
例えば、ご家族の方が残された帯に「たつむら製」とあっても、あまりお着物に馴染みのない方ですとそれが手織が織機によるものか判別するのは難しいかもしれません。
産地染織は文字通り特定の産地の染織品なのですが、その産地の技法が重要無形文化財や伝統工芸品に指定されていることがございます。久留米絣は1956年という戦後の比較的早い段階で重要無形文化財の指定を受け、その後1976年には伝統工芸品の認定もされております。この久留米絣の技術保持者の代表作家が松枝玉記です。久留米絣の伝統的な手織による柄つくりと藍染を最も得意とし、短歌の才もあったことから、詩的感性を取り入れた文様や濃淡豊かに表現された藍染で唯一無二の作品を作り出すとともに久留米絣の発展に努めました。
それら「作家性(織元・染元)」や「産地染織」を担保するのが「証紙」です。証紙とは布地の織元や織物工業組合などが発行している紙で、織元の名前や正絹シール、伝統工芸品マークなどがあり、この証紙の有無が査定価格を大きく左右すると言っても過言ではございません。
もちろん証紙のない場合でも高級着物の買取り自体は可能で、鑑定力のある業者なら判別はつきます。しかしながら次の方にお渡しするということになりますと、ご購入されるお客様の立場からしますとやはり証紙があった方が安心材料となりますので結果的に買取価格が下がってしまう傾向にあります。
最後に「コンディション」です。着物は湿気に大変弱く、タンスなどにしまったままですとシミや虫食いの原因となり、結果的に査定額を下げてしまいます。
特に高級着物や作家ものですと一点もののお着物が存在します。定期的にお着物の状態を確認される上でも年に二回くらいの虫干しをお勧めいたします。
時期的には1月から2月の湿気の最も少ない時期と夏と秋についてしまった虫を払う意味でも10月から11月が最適かと存じます。