江戸期刺繍
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ハギレとは着物などを裁った、残りの布であり、漢字では「端切れ」と表します。
着物一着分にも満たず、半端な切れ端でしかないハギレですが、古今東西問わずハンドメイドの素材として様々な形で活用されております。今でもインターネットで「ハギレ 活用法」や「ハギレ パッチワーク」「ハギレ 小物 作り方」などの言葉で検索すると色々な活用方法を教わることができます。
ハギレはそれこそ10㎝四方にも満たない小さな切れ端だったりするため「いつか使うだろう」と貯め込みやすい素材でもあります。パッチワークや裂き織などをされる方はそれこそ大量にハギレをご蒐集されているかもしれません。
時代のあるハギレ、例えば明治時代の藍染木綿や18世紀のフランスアンティークコットンそしてインド更紗、そういったいわゆる古布のハギレは希少性から鑑みても特に捨てがたいハギレのひとつでしょう。
しかし使おうと思われている時はよいのですが、代替わりなどされハギレの処分をしようと思われた際こんなお声をよく耳にします。
・「量がありすぎて処分に困る」
・「どのハギレも同じに見えるけど価値がわからない。買取なんてしてもらえるの?」
・「逆にハギレの処分には処分費がかかるのでは?」
今回はそんなハギレの処分において抑えておきたいポイントを挙げていきたいと思います。
これからハギレを処分したい、ハギレの価値を知りたい、ハギレを売りたいと思われている方のお役に立てたら幸いです。
買取対象となり得るハギレの種類
そうは申し上げましても正直なところ全てのハギレが買取可能というわけではありません。
買取の前提として、ハギレはパッチワークなど細工物への転用を前提としていることがほとんどなため、数センチにも満たないハギレが買取となることは稀なケースです。極小のサイズで買取となるものは古布の中でも最も希少性に高いものになります。例えば正倉院裂などがそれに当てはまりますが、先ず一般の方で手に入れることは困難な古布です。
ただしこういった希少古布はハンドメイドの素材ではなく古布コレクターや研究家にとっては垂涎の的であることは間違いございませんのでかなりの高額買取となることは疑いようのない事実でもあります。
ただしこの項ではハンドメイドやパッチワーク、古布細工物の素材として買取しやすいハギレとそうではないハギレについて述べていきたいと思います。
先ずは買取対象になるハギレを説明いたします。
・江戸縮緬(江戸ちりめん)
江戸ちりめんとは江戸時代から明治時代前期頃まで生産されていたシボのある絹織物です。
大まかに分けて江戸時代の手描友禅、自然染料を用いたものと明治時代以降に発展した型友禅と化学染料を用いたものがあります。
江戸縮緬の最大の特徴は絹糸の質が最も細く繊細なため布自体に透明感があります。
そのためハギレの買取としましては、保存状態にもよりますが1枚で2万円で買取された例もあり、最も高価な査定となりやすいハギレのひとつになるでしょう。
用途としましては時代のある人形の衣装作りなどが挙げられます。
・縮緬(ちりめん)
大正時代以降の縮緬を「大正縮緬」とも呼びますが、江戸縮緬に比べると糸の太さから布味が若干異なります。そうは申し上げても戦後の工業生産された縮緬地よりはんなりとし、透明感も健在で、より上質であることは間違いありません。
大正時代から昭和初期の縮緬は明治時代の江戸縮緬と比べ格段に華やかになるのが特徴です。
化学染料がより一般的となり鮮やかな赤や黄色の原色を用いた花模様などが多く見られます。子供用の着物もそれ以前のものとは比べものにならないほど色鮮やかな文様が施される傾向にありました。
江戸縮緬より希少性は低いことから買取査定額は、布の残り具合にもよりますが1枚2000円から8000円の幅で査定されたケースも少なくありません。
この時代の縮緬は最もハンドメイドに適したハギレでもあり、押絵などの縮緬細工や人形衣装作りに転用されております。
・刺繍裂(ししゅうきれ)
綸子地や江戸縮緬地に金糸や銀糸、色糸で刺繍が施されたものが刺繍裂です。
江戸時代は刺繍の技術が鑑賞的に最も発展した時代であり、この時代の刺繍裂は古裂として希少性が高く、古布コレクターの方にとってコレクターアイテムでもあります。古布蒐集家の中には江戸時代の刺繍裂を裂帖として保存し研究されている方もいらっしゃいます。
・錦紗(きんしゃ)
錦紗は大正時代頃から流行した縮緬に比べてシボが小さく、場合によっては地紋もある絹織物です。
文様も大正時代らしい華やかなものが多く、特にこの時代はアールヌーヴォー、アールデコ様式を取り込んだデザイン性豊かなものも生産されました。
同時代の縮緬よりお手軽な価格で手に入れることができるため古布を用いた細工物に用いられることも多い古布です。
そのため買取価格としましても縮緬に比べると抑え気味で、保存状態によりますが1000円~3000円と査定される場合もあります。
・木綿
ある意味ハギレと言えば木綿と思われる方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
木綿は藍染・型染・更紗など様々ございます。
木綿が日本で作られるようになったのは江戸時代、その頃は大変貴重で高価な布として知られておりました。
和更紗はインド更紗など海外から輸入した異国情緒溢れる文様を日本風にアレンジしたものになります。
藍染は日本を代表する染料・藍で染められた綿織物です。
藍染は型染や絣、絞りなどの技法で色々な文様が施されました。明治以降は日常用の衣服などに藍染木綿が用いられ海外ではジャパンブルー=藍染として認知されるほどでした。
木綿の用途は様々です。時代のある更紗などは茶道具や骨董品を包む仕覆にも用いられます。
藍染や型染は着物リメイクや古布リメイクをされる方にとって馴染みの古布ではないでしょうか。
また木綿は高価な布だったことから破れたら接ぎ縫いやハギレを縫い重ねるなどして補強し使い続ける文化がありました。そうした生活の中で生み出されたものが襤褸(BORO・らんる)になります。
ハギレを何層にも縫い重ね、経年と共に布がほつれて融け合ったようになります。そんな何層にも重なりあった襤褸は重量も数キロに及ぶものもあり査定額が、サイズにもよりますが3万円から5万円という高額になる例もございました。
パッチワークキルトをされる方やカルトナージュを作られる方はフィードサックやヨーロッパ更紗など海外のアンティーク木綿のハギレをご使用されたりもします。
お持ちのハギレが「まだ使える量と余地もあり、時代もあり、ハンドメイドの素材としてニーズがある」と判断された場合には買取対象として十分に考えられます。
上記のような古布やハギレは古布回収日に捨ててしまう前に、古布回収業者に処分を依頼する前に、古布やハギレに精通した買取業者に相談するとよいでしょう。
逆に買取対象となりにくいハギレとはどんなものでしょうか。
・数が数枚しかない
ハギレは基本的にリメイク素材となりますので1枚2枚などの少ない枚数では買取対象とはなりにくいのが現状です。
・サイズが小さい
ひと巾(約36㎝)ないハギレはよほどでない限り使い勝手が悪いためリメイク素材としては買取対象にはなりにくいです。ただ希少性の高い古布に関してはその範疇にはあらず、コレクターアイテムや研究素材として買取される可能性があります。
・ポリエステルや化繊、ウール、混紡などのハギレ
工業製品として大量生産された布のハギレに関しましては買取対象となることはほぼありません。
戦後のコットンも同様です。ただこれらは安価で入手でき、現代風なデザインのものもあることから個人間ではぜひ欲しいと思われる方がいらしゃるかもしれません。そういった際にはネットオークションやフリマサイト、通常のフリーマーケットなどをご利用されるとよいご縁と巡り合えるかもしれません。
ハギレとは着物などを裁った、残りの布です。パッチワークやリメイク素材、また古布細工物や骨董品や茶道具を包む仕覆として転用され、買取対象として十分に考えられます。
特に時代のある古布のハギレは時として高額査定となることもあります。
古布回収日に捨ててしまう前に、古布回収業者に処分を依頼する前に、古布やハギレに詳しい買取業者に相談することをお薦め致します。場合によっては何社かに問い合わせてみるのもよいかと思います。
店舗 骨董茶道具古布はぎれアンティーク着物販売・買取/各種教室/呂芸
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この記事を書いた人
東京美術倶楽部 桃李会
集芳会 桃椀会 所属
丹下 健(Tange Ken)
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