江戸期刺繍
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古くなってしまった布、着なくなってしまった着物、いつまでもタンスの中にしまっておくわけにもいきませんよね。古い布だし価値なんてないだろうから自治体の古布回収やリサイクルショップにまとめて処分してもらおうと思っているお客様も多いと思います。
それは少しお待ちくださいませ。
古布や着物にも一般的な流通品とそうでない高価な布、歴史があり希少性の高い着物があります。でもどんな古布や着物に価値があり、高く査定してもらえるかわかりにくいですよね。
そこで今回は皆様のご自宅に眠ってるかもしれない価値ある古布や着物についてのポイントをいくつかご紹介したいと思います。
単純明快ですね。まずは布や着物が古くて時代がありそうなことです。
一見ボロキレにしか見えない布や着物が実は高額査定の対象であることが古布の世界では十分にありえます。その一例が「木綿」です。特に藍染の木綿布の場合はその可能性が十分に考えられます。
木綿はコットンとも呼ばれ今ではTシャツなどにも用いられている一般的な布地ですが、そのためもともと貴重な布であったことはあまり知られておりません。日本国内で綿花の栽培が奨励され流通し始めるのは江戸時代になってからです。それまでは舶来品の木綿を一部の武家や豪商、そして茶人などが数寄の対象、贅沢品の対象として珍重しておりました。
国内で栽培されるようになり一般に普及するようになるとほとんどの衣服や日用品に用いられるようになります。さらに藍染には布地を補強する性質があり、そのため日本全土で藍染の木綿が普及していきます。
文明開化後に来日したイギリス人科学者のロバート・ウィリアム・アトキンソンは日本で見るもの全てに藍染の木綿が用いられている様子から日本=青、「ジャパンブルー」と称し、欧米に紹介しました。
「ジャパンブルー」、サッカーなどでよく使われている言葉ですよね。そのワードの語源は藍染木綿だったんですね。
この時代の綿花と綿布は手紡ぎ・手織りが基本の手工業でしたので、温かみがあり現在のそれとは糸味が異なります。色合いも自然染料を用いているため風合いがよく現在活躍されている服飾デザイナーの方などがこの時代の藍染を買われて古布が最新のデザインにリメイクされるという新たな潮流も見受けられるようになりました。
それゆえに木綿は高額査定の可能性がある古布のひとつと言っても過言ではございません。
この様に古い布には、現在のそれにはない質感などが評価されており、単純に「ボロい布だから」「古い着物だから」と処分されてしまうのは「勿体ない」と思われる理由です。
例えばご自宅のタンスにお祖母様から引き継がれた着物がある、古布があるとします。それらは「古くて価値のなさそうな布」ではなく「ひょっとしたら価値があるのかもしれない布」な可能性があるということです。
でもそれがどんな種類の古布なのか、本当に希少価値の高い着物なのか、そのことがわからないと判断しにくいと思いますのでご紹介させて頂きます。
正絹は純絹とも本絹とも呼ばれる絹織物を指します。
古布としましては「ちりめん(縮緬)」「錦紗」「銘仙」「綸子」などが挙げられます。なかでも「江戸ちりめん(江戸縮緬)」と呼ばれる古布は古布の中でも最も希少性と需要のある古布のひとつです。
時代的には江戸時代後期から明治時代初期のちりめん(縮緬)のことを指します。江戸ちりめん(江戸縮緬)に関してはハギレの状態でも買取りが見込めることも大きなポイントのひとつです。
ハギレに価値があるとはあまり考えにくいですよね。それにはもちろんちゃんとした理由がございます。
布の希少性もさることながら、ちりめん細工や押し絵、または人形の衣裳作りになどと用いられ需要が落ちないのが江戸ちりめん(江戸縮緬)です。
古布は「使われる骨董品」でもありますので、使われれば当然その数は減ります。時代があるものですと現在ではもう作られていない布地ですので、その希少価値は高まる可能性も十二分に考えられます。
もちろんシミの有無などのコンディションや残った文様や柄にも左右されるのですが、例えばお祖母様の蒐集されたハギレの中に江戸ちりめん(江戸縮緬)があった時は高額買取の可能性が十分あり得ます。
ちりめん(縮緬)とは表面に「シボ」と呼ばれるシワ加工が施された絹織物を指しますが、一方で地紋のある「綸子」も江戸ちりめん(江戸縮緬)同様ニーズがございますので十分買取り評価対象になります。
その他にも絹織物としては「大正ちりめん(大正縮緬)」や「錦紗」、「銘仙」、など大正・戦前に織られたものですと江戸ちりめん(江戸縮緬)ほどではございませんが買取り対象足りうる古布と言えます。
木綿は先述致しましたが綿糸の織物です。また木綿の染織品は日用品として用いられた木綿と来客時やお茶の席用など特別誂えた木綿の二種類に分けられます。
染織方法も様々で藍染、縞模様、型染(型染め)、絣などがあり、用途も作業着や布団皮、風呂敷など多岐に渡ります。日常で用いる布として広く流通したため比較的「家にある」可能性を秘めた古布のひとつでもあります。
日用品ではない木綿には意匠を凝らした多色による型染(型染め)のものや「更紗」と呼ばれる元々は外来品のものとそれを模した日本製のものがあります。それら更紗は前者から「日本古渡更紗」、後者を「和更紗」と呼ばれ、今でも古布を蒐集されるコレクターの間では人気がある貴重な古布のひとつになります。
木綿は現代のような工業生産による均一的なものではなく、それぞれが職人による手工業によるものですので綿花の質や染織方法が異なり、そのことが今現在古布木綿のニーズを押し上げる要因になっております。
古布の木綿はリメイクの素材として現在用いられております。木綿も使えば使うほどこ慣れてきて味わいある布になります。それこそが現在の服飾デザイナーの方々が認めているポイントなのです。
そのため時代のある木綿はその糸味もあり価値が高まっております。
木綿に関しては日常使いされる布ということで絹織物と比べコンディションが落ちるものもあるのですが、それが逆に好まれる時もある逆説的な布でもありますので「古い布」だから「ボロい布」だからという見た目の理由から手放さないことをお勧め致します。
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この記事を書いた人
東京美術倶楽部 桃李会
集芳会 桃椀会 所属
丹下 健(Tange Ken)
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