実は難しい!民芸品とお土産と伝統工芸品の違い
観光地の「お土産」を見ますと「民芸品」や「工芸品」と銘打たれ店頭に並んでいることと思います。
民芸品と工芸品、どちらの言葉もニュアンスも似ており、違いについて意識することもないかもしれません。確かに両者ともに日常生活用に作られる手工業製品という大枠では一致しております。しかし狭義としては「民芸品」と「お土産」と「工芸品」は少々異なります。
以下のポイントがお客様の民芸品・お土産・工芸品のご売却の参考になれば幸いです。
①民芸品
民芸という言葉がありますが、これは「民衆的工芸品」という造語の略になります。民衆的工芸品と言う言葉を創り出した人物こそ「民芸運動(民藝運動)」の祖・柳宗悦です。
この「民芸」という言葉が、運動に参加した陶芸家の河井寛次郎や浜田庄司、染色家の芹沢銈介(芹沢けい介)などの働きにより世の中にひとつの美意識として認知され浸透していきます。
民芸の考え方は一言で言えば「用の美」です。手工業により安価で大量生産される日用雑器の中にこそ名もなき職人たちの、作意のない純粋無垢で献身的な美があるとする考え方です。例えば今日の李朝に対する評価は間違いなく柳宗悦の功績と言えるでしょう。
民芸はその土地の風土・風習でしか生まれ得ず伝統が脈々と続くそんな歴史の中で生まれる産物ですが、その美意識の源流は柳宗悦の美意識とも言え、彼の思う美意識に沿ったものこそ「民芸品」と言えます。純粋なフォークアートもこれに属するかもしれませんね。
そして戦後に空前の民芸ブームを迎えます。
高度経済成長の中、失われてゆく田園風景を求めるブームが生まれ、民芸とつけたら売れる時代になり、いわゆる「民芸風」がもてはやされ民芸が「田舎の素朴なお土産」として認知されてしまった、一連の消費対象としての「民芸品」のイメージが今現在もなんとなく一般的に使われているニュアンスに思えます。
消費ブームが去り近年民芸が見直されつつありますが、そこには柳宗悦の息子・柳宗理の影響が大きいと思われます。柳宗理は日本を代表するインダストリアルデザイナーです。インダストリアル、つまり工業製品です。
柳宗悦の時代は手工業でもよかったのですが戦後の大量生産品は明らかに工業製品です。何気ない金属製のフォークやスプーンにいかに作意のない美を見出せるか、工業製品の中に「用の美」を見る考え方が今を生きる「民芸品」なのかもしれません。
しかしそう言われると何が「民芸品」なのか、見分けることが難しいかもしれません。
お土産品はそれぞれコレクターが存在する骨董品の位置付けでしょう。そこに求められるのはまず「希少性」です。
温泉土産といえば伝統こけしが有名ですが、こけしには戦前の第一次こけしブーム・戦後高度経済成長期の第二次こけしブーム・そして平成20年代から今へと続く第三次こけしブームとあり、絶えずコレクターがいる骨董ジャンルと言えます。
全国こけし祭りでは「こけしオークション」が行われており、遠方から参加されるこけしコレクターも少なくありません。
こけしに限らず、木彫りの熊などもお土産の代表ですが、時代がある希少性の高いものは骨董としての価値が十分にあります。
ただ基本的にお土産ですので、どのこけし、どの木彫りの熊に骨董的価値があるのか見分けることはなかなか難しいジャンルとも言えます。
工芸品は実用性と美術的美しさを兼ね備えた手工業製品とされ、民芸品との違いをよく聞かれることがあります。
確かに両者の差は曖昧であり、恐らく人によって見解が異なるかもしれません。
私の中での見解では、違いのひとつに工芸品には作家性があることだと思います。いわゆる伝統工芸品は、経済産業大臣が指定する伝統的工芸品や各地方自治体が指定する伝統工芸品など文化財保護法により保護されたものがございます。
そういった産業の職人や作家は人間国宝として国の指定を受けていることも多いため、無名の職人により生産される民芸品とは意味合いが少々異なる気がします。
もちろん民芸品として評価され工芸品としても評価され指定されている「大舘曲げわっぱ」などもありますが、こと買取り査定の評価としては工芸品はブランド力と作家性が重要であると思われます。
「西陣織」などの芸術性の高い伝統工芸品はまず買値の段階で数百万を超すものがありますので必然的に査定額も高額になる可能性があります。西陣織の帯において「龍村平蔵」という職人の名は一大ブランドです。このような工芸品を代表する作家性のあるものは査定においてプラス評価になります。
さらに伝統工芸品などは作家や産地を証明する共箱や証紙があることが多いので、そういった付属品もあわせて確認したいポイントですね。
民芸品も工芸品も一時ブームとなり高値で取引されるものが多くございました。
しかしブームも去るとどこでも売れる、なんでも売れる市場ではなくなり、特別な民芸品・工芸品が選ばれるようになったのは時流として仕方がないのかもしれません。
作家や産地というブランド力がまだ健在な伝統工芸品はまだしも、「用の美」や「フォークアート」という極めて感覚的でファジーな世界観である民芸品の査定は買取り業者の市場認識と査定・鑑定力が必要不可欠なジャンルになります。
どの民芸品が市場ではどのくらい価値があるとされているか、そこを見極めることができる買取り業者の選択をお薦めいたします。
一部の芸術的工芸品はともかく、民芸品・お土産品・工芸品は最も価値を見出すことが難しいとされる骨董ジャンルです。そのため業者により買取り価格に差が出る可能性が大いにあり得ます。買取り業者が民芸品・工芸品を得意としているかも業者選択のポイントと考えてもよいかもしれません。
弊社・呂芸は1985年来、古布・着物・骨董・民芸・工芸と真摯に携わって参りました。その道程で培った知識と販売経路により他店より高額での民芸品・お土産・工芸品の査定が可能です。民芸品はわかりにくいと思われたら、まずは私たち呂芸にご相談下さいませ。
民芸品・工芸品をご売却の際は呂芸にお任せ下さい。